深時計を見ると、さっき見た時は40mだったのに、まだ一分もたっていないのに、もう、 なんと42m超!
残圧のチェック!
150ある!  いける!
しかし
さらに、落ちて行く・・・・゜凄い流れで、45度近い急斜面を海底に向って斜め下に
引きずりこまれていく・・・
みるみる遠ざかる、バディとインストラクター・・・
一瞬の内に、二人の影は、流れで渦巻く砂の濁りの中に消えていく・・・
なんという、凄い海底流なんだろうっ?
42m以上の水中で、完全に「ロスト」・・・
廻りは、45度の角度で渦巻きながら下り落ちる、潮と濁った砂ばかり、深くなるに連れて段々と暗くなっていく・・・
 
フリーダイビング=素もぐりをする世界の8人に入る「篠宮竜三」は、107mを今年の
バハマ大会で記録しています
私も篠宮選手のテレビを見て素もぐりに、大変に興味が強くなってきているこのごろです
、今のところ、10mが限界なので、今年は15mくらいまで潜って見たいと思っていました

今の自分は、150kのエアーの入ったタンクを背負って、海底に向かって落ちている最中です、深度潜水の絶好のチャンス!、

下を見ると、真っ暗な深淵に流砂が際限無く落ちて行く・・・
ふと、50mか、60mくらいまで、いやいや、100mまで、このまま、落ちて行きたいという、願望が・・・・

しかし、エアータンクで40m以上潜水すると浮上に相当な時間を掛けて「減圧」しながら、浮上しないと、間違いなく「いわゆる潜水病=減圧症」になることは間違いありません
60m潜ると約、1時間の減圧潜水−安全停止をしなければなりません
残圧150ではぎりぎりです

好奇心を満たすか?
それとも、安全を優先をするか?

ううっ  行きたい一っ
100mとは言わなくても、せめて、60mまでは、行って見たい一っ
しかし、流れから脱出出来る保障は無し!

でも明日から、減圧症で頭痛と体中の関節の痛みに、絶えながら仕事をするのはいやだな〜・・・

などと考えながら、激しい流砂に飲み込まれながら
二者択一の人生の選択を迫られていました  (誰もせまっていないって?_)
しかし、
これは、ディズニーランドなんか、目じゃないぜ!!!

すごいスリルだあっ〜
ひゃつほ〜っ
落ちる落ちる〜っ

なんて
楽しんでいる場合じゃない!

結局、脱出する事にしました
BCにエアーを入れて地面を蹴って離底して緊急浮上!

ところが、深度計を見るとまだ42mのまま・・・
海底からは浮き上がってて行くのに、深度は変わらない!

45度斜面の海底は間違いなく遠ざかっていく・・・
そう
まだ海底流に引きずり込まれているのです
もう少しBCにエアーを入れて様子を見ると、少し上昇している

そのまま

フインキックで少しづつ上昇を開始!

20mでBCのエアーを抜いて安全停止・・・・約2分

再び、フインキック開始・・・

5mで再度安全停止・・・約5分間・・・・

廻りからのエアーの放出が終ってから、ゆっくりと上昇する

もう、海面は直ぐそこに・・・・

あの海面が、「あの世」と、「この世」の境目です

そう、水と空気の境目こそ、「生}と「死」の 狭間・・・・・・・

戻りたくないな〜・・・・・・

海面から頭が出ると、海洋公園が見えます、現実の世界に戻ってきちゃいました・・

岸に向って、フインキック開始!

しかし、なぜか、どんどん岸から離れていく!!

海面まで、あの「沖だし」が  起きているのです

懸命のフインキツクにもかかわらず、とうとう、海岸線は見えなくなってしまいました

「沖だし」の流れから逃げるために、最初は左へ流してみる

駄目ですやはり沖だしがあります

次は、右に流してみる・・やがて岸がみえてきました!

これなら「沖だし」から逃げられる!

」それから30分ほど全力でフインキックで脱出です
しかし、エアーと体力が無くなってしまいました

仕方なく、ギブアップ・・・そう・・・残る手段は「フロート」です

結局、自力で岸にたどれなくて、レスキューされました

「恥ずかしながら、帰って参りました」・・・・・(小野田少尉の名せりふです)

また、あのこの世の地獄に戻ってしまいました

まだ、天は死ぬのを許してくれないようです・・・仕方が無い、もう少し、

頑張るか・・・・